忘れかけた傷

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あたしがたけちゃんに恋に落ちるまで、全然時間はかからなかった。 『今日は泊まれる?』 『ごめんな…また明日も会いに来るから。愛してるよ…まこ』 『たけちゃん…あたしも、愛してるよ』 あたしのマンションに仕事帰りに来ては、身体を何度も重ねて。 帰る間際いつも『愛してるのは、まこだけだよ』そう言ってキスを落として帰る後ろ姿を何度も見送った。 そんな日々を、1年も続けたある日。 1度目の妊娠に気が付いた。 『今は…まだ結婚できない』 『離婚が成立するまで、もう少し待ってくれ』 そう言われて、辛かったけどあたしは中絶した。 中絶よりも、たけちゃんを失う事の方が、あたしは怖かったから。 .
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