忘れかけた傷

11/15
前へ
/340ページ
次へ
『まこ、おいで』 ベッドから、手をゆっくり伸ばしてあたしを引き寄せると、すぐに唇を優しく奪って。 少し強引に剥ぎ取られた服、すぐにその唇はあたしの身体中を這う。 『たけ…ちゃ…ンッ…』 『まこ…俺の事、愛してる?』 『アッ…愛してる…ッ…』 『…良い子だ、ご褒美だよ』 そう言って身体を繋げながら、朦朧とするあたしに、いつも、同じ台詞を囁いて、あたしに魔法をかける。 『まこ…愛してる』 あたしは、心のどっかで気が付いてたのかもしれない。 たけちゃんの愛は、本物じゃない事に。 いつから、こんなに愛されたいと願ってるんだろう。 母親の愛が、弟だけに向けられてるのは解ってた。だけど…嘘でもいい、愛して欲しかった。 15歳の夏、初めて経験してから、あたしは男と身体を重ねてる時間だけは ゛愛されてる ″そう感じるようになった。 .
/340ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14222人が本棚に入れています
本棚に追加