忘れかけた傷

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『3人で暮らそう。まこ…愛してるよ』 2度目の妊娠が解ったのは、中絶から半年過ぎた頃だった。 『妻とは離婚して、まこを迎えに来るから』 たけちゃんの言葉を信じて、悪阻でだるい身体で仕事をこなした。 2週間後、迎えに来ると言った筈のたけちゃんから、現金の入った封筒が届いた。 『またか…ハハッ…バッカじゃないの…っ…』 あたしは、自分のバカさ加減に呆れて、泣きながら笑った。 封筒に入ったお金を持って、1人でまた同じ病院に行った。 『何度も妊娠、中絶を繰り返すと、赤ちゃんを産めなくなってしまう可能性があるの。相手の方と相談して、産む事も考えた方がいいわ』 『産みません、今日、堕ろして下さい』 愛情をもらって育ってないあたしに、子供なんて育てられる訳ない。 『本当にこの人の子供が産みたい、そう思った時にあなた後悔するわよ?』 美人な女医は、あたしをバカにしたみたいに言った。 だったら、もう男なんて、いらない。 .
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