忘れかけた傷

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「おいっ、何ボーッとしてんだよ」 「あー、ごめん…」 何、思い出してんだろ…あたし。 「ほら、行くぞ」 左手の繋がれた手を引っ張られて。 「って、どこ行くの?あたしん家、あっちなんだけど…」 男なんて…やっぱ、みんな同じでしょ? 「あー、俺ん家、飲み直し」 ねー、富田、あんたも…アイツと同じなの? 「ちょっ…、あたし、帰るよ…」 手を離そうとしたあたしを、富田が抱き寄せる。 「無理、今日はお前の事…1人にできない」 「何っ…それっ…っ…」 少し前の、富田との幸せな時間のせいで、忘れかけてた過去。 思い出すと、まだ少し痛むんだ、あの時の傷が。 ねー、富田、優しくされると怖いよ…。 騙されるのも、傷付けられる事も、随分慣れっこになってるあたしだけど。 あんたの事…好きだから、嫌いにさせないで。 .
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