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「大丈夫…だって…」
富田の胸を叩いて、優しく抱き締めてくれる腕の中から抜け出そうとした。
「大丈夫じゃねーじゃん、全然、大丈夫って顔してねーよ」
ぎゅっと、あたしを抱き締める手に力が入って、あたしは何も言えなくなって、富田の肩に頭を預けた。
「なー、さっきの男、いくつ?」
「……10コ歳上」
「そっか…。なぁ、身体…平気なのか?」
「中絶の事…?」
「あぁ、うん…」
「平気…かな、解んない。でも…子供は産めないと思う…2回、堕ろしてるし…、うちの母親が知ったら怒るだろーね、嫁の貰い手もないって嘆くよ ハハッ」
悲しくもないのに、涙が出た。
違う、悲しいと思いたくないのに、涙が勝手に出た事に悲しくなった。
「もらってやる ハハハッ」
言いながら、肩を揺らして笑い出した富田の顔を見上げた。
「誰も貰い手が居なかったら、俺がもらってやるよ」
「はぁー!?」
「はぁー!?じゃねーよ、ありがたく思え、お前みたいな口が悪くて、素直じゃなくて、普通の女よりでかくて、煙草ばっか吸ってる女……よっぽどの物好きじゃねーと無理だろ」
「あー、もー、うっさい!!あんたにそんな事言われたくない!!いーの、あたしはずっと1人で生きて…ンッ…」
富田は笑って、ちょっと強引に、泣きながら怒るあたしの唇を奪った。
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