躊躇い

6/32
前へ
/340ページ
次へ
インターホンの音で目が覚めた。 10時に女の部屋を訪ねるヤツなんて、ろくなヤツじゃない。 ここはビシッと言ってやろー、そんな事を考えながら、玄関のドアを開けた。 「ちょっと、何時だと思っ…」 「お前、無用心過ぎるだろ、いきなり開けんなよ、バカ」 「あんた、何やってんの?」 「お前、具合悪くて帰ったって聞いたから、ほら、お見舞い」 富田は、ビニールの袋を目の前に差し出して笑った。 「寒いから早く入れろよ」 「あー、ごめん」 当たり前みたいにさっさと靴を脱いで、部屋に入ってく後ろ姿を見ながら。 なんであたしが謝ってんだよ…。 部屋、掃除しといて良かった。 「あれ、お前珍しいな、部屋綺麗じゃん」 「そー?いつも、こんなもんでしょ」 「や、全然ちげーだろ」 富田は呆れた顔でキッチンに向かった。 「具合、平気なの?風邪でも引いたのか?」 「んー、わかんない」 「何だそれ、飯は?」 「まだ、寝てたから」 「座ってテレビでも見てろ」 「んー、わかった」 .
/340ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14223人が本棚に入れています
本棚に追加