躊躇い

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『ちょっとクローゼット見せてみろ』 富田のその一言から始まって…。 『着てみて』 今、あたしはなぜか、ドレスに着替えてる。 もー、なんなのよ…。 「はい、ご主人様、どーですか」 トイレから出て、富田の前で一回りして見せたあたし。 富田は、あたしに近付いて、ドレスの裾を上げた。 「ちょっ…何すんのっ!!」 膝下のアシメントリーになったドレスの裾が、富田の手によって、膝上にされて。 「これ、長すぎ」 「これは、こーゆーのなの!!」 「ハサミ、ねーの?」 「はぁ!?まさか、切るとか言わないでよ?」 「切るんだよ、早く、ハサミ」 もー、ホントになんなのよ…。 あたしは渋々、ハサミを手にして富田に渡した。 「工作用のハサミかよ、まっ、いーけど」 言いながら、一瞬の迷いもなく、ドレスにハサミを入れた。 あーあ、このドレス…4万もしたのに。 .
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