躊躇い

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「これ、履いてみろ」 最初に渡されたのは、ブラックのサテン素材のパンプス。 キラキラの、宝石みたいなビジューが付いたものだった。 「はい、どーお?」 富田は、廊下に正座しながら、首を傾げる。 「次、これ」 「はいはい」 サーモンピンクのエナメル。 「次、これ」 ネイビーとホワイトのパンプス。 「次、これ」 「はいはい」 ベージュのシックなパンプス。 「次は……これ」 あたしのお気に入りの、真っ赤なエナメルパンプス。 「お、これ…だな、やっぱ」 ふーん…、やっぱね。あたしも、これが1番好き。 「じゃ、次は…ジャケット」 「あー、ごめん、ジャケットは最近買ってないから、普段着のしか持ってない」 「そーか…」 富田は何かを考えながら、部屋に戻って行った。 「ねー、もー、脱いでい?」 「あ、やっぱ、ちょっと待ってろ、そのままで」 そう言って、慌てたよーに玄関から出て行った。 何あれ…意味わかんない。 残されたあたしは一人、バカみたいに並べたパンプスを片付けた。 .
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