躊躇い

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「まこ、あんた、どんだけ伸ばす気?」 忙しさのせーにして、伸ばし放題のあたしの髪の毛を掬い取って、紗世は笑った。 「本当はカラーもしてあげたいとこだけど…」 「時間がないの!!お願い!!何とかして!!」 「りょーかい、まこの頼みだ、仕方ない」 そう言って、紗世はあたしの髪の毛をいじり始めた。 「完成ー!!ん、可愛い」 「ありがと…」 鏡に写った自分を見て、ちょっと恥ずかしくなった。 器用に盛られたアップスタイル。 伸びきった前髪は、ばっちり後ろに固められて、おでこが全開のそこに、パールのカチューシャを乗っけられた。 「まこー、あんた、顔ちっちゃいんだから、これのが似合うよ。あと、化粧ぐらいちゃんとしなさいよ」 紗世は言いながら、あたしの顔にメイクをしていった。 目の前に置かれた携帯が鳴り響いて、富田からの着信に慌てて出た。 「お前、なんで家に居ねーの?まさか、逃げた?」 「ちがっ!!」 .
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