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「まこー、あんたも隅に置けないねぇ」
さっきから紗世は、店の外で煙草を吸いながら待ってる富田を見て、ニヤニヤしながらあたしを茶化して。
「違うから…そんなんじゃないし…」
「あんたと何十年付き合ってると思ってんの?ハハハッ」
多分、紗世はあたしが富田を好きな事ぐらい、まるごとお見通しだと思う。
まー、それは、今度ゆっくり、酒でも飲みながら話す事にしよう。
「紗世、本当にありがとー!!」
「いーえ、イケメンの彼、お待ちかねだから早く行きな。近いうち、まこの奢りで飲みながら報告してよ!!」
「りょーかい」
あたしは少し、緊張しながら店の扉を開けた。
「富田、ごめん、お待たせ」
「あ?終わったか」
言いながら、煙草を携帯灰皿に擦り付けた富田が振り返る。
ブラウンの瞳を、これでもかってぐらい見開いて、あたしを見た。
「何…?もしかして…変?」
あたしはなんか、照れ臭くて、富田から視線を反らした。
だって、富田がカッコよかったから。
普段は見た事なんてない、シックなダークグレーのスーツに、深いボルドーのチーフ。
遊びで取り入れたのか、ネイビーのドット柄の蝶ネクタイが、すごく似合ってた。
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