躊躇い

16/32
前へ
/340ページ
次へ
「まこー、あんたも隅に置けないねぇ」 さっきから紗世は、店の外で煙草を吸いながら待ってる富田を見て、ニヤニヤしながらあたしを茶化して。 「違うから…そんなんじゃないし…」 「あんたと何十年付き合ってると思ってんの?ハハハッ」 多分、紗世はあたしが富田を好きな事ぐらい、まるごとお見通しだと思う。 まー、それは、今度ゆっくり、酒でも飲みながら話す事にしよう。 「紗世、本当にありがとー!!」 「いーえ、イケメンの彼、お待ちかねだから早く行きな。近いうち、まこの奢りで飲みながら報告してよ!!」 「りょーかい」 あたしは少し、緊張しながら店の扉を開けた。 「富田、ごめん、お待たせ」 「あ?終わったか」 言いながら、煙草を携帯灰皿に擦り付けた富田が振り返る。 ブラウンの瞳を、これでもかってぐらい見開いて、あたしを見た。 「何…?もしかして…変?」 あたしはなんか、照れ臭くて、富田から視線を反らした。 だって、富田がカッコよかったから。 普段は見た事なんてない、シックなダークグレーのスーツに、深いボルドーのチーフ。 遊びで取り入れたのか、ネイビーのドット柄の蝶ネクタイが、すごく似合ってた。 .
/340ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14223人が本棚に入れています
本棚に追加