躊躇い

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「や、別に……ほら、行くぞ」 なーんだ…。 ちっとは ゛可愛い ″ とか、お世辞でも言えねーの? 言われたとしても、素直に、ありがとーなんて言わないけど。 表情とは正反対の言葉に、少しだけ不満になって、さっさと歩いて行った富田の後を追った。 「ねー、電車?」 「あー、酒飲むし、それに俺、車持ってねーし」 「え?あんた、車持ってたじゃん」 「あー、あんま乗んねーから売った」 「ふーん…」 まぁ、富田の仕事ぶり見てれば解る。 忙しくて、乗るヒマもないか。 「ねー、あたし、富田がスーツなんか着てるの、初めて見た」 「まーな、こんな堅苦しいの、年に1回で充分だろ」 「でも、意外と似合ってんじゃん。パーティー会場でナンパされちゃうんじゃない?ハハハッ」 「何だよそれ、お前こそ、知らねー男にナンパされて持って帰られんじゃねーぞ」 「大丈夫ー、口が悪くて、普通の女よりでかくて、煙草ばーっかり吸ってる女、誰も相手にしてくれませんからー」 富田にこの前言われた事を、そっくりそのまま返して、あたしは精一杯の嫌味を言った。 .
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