躊躇い

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しばらくして、会場が暗くなった。 隣でシャンパングラスを傾けてる富田に、あたしは酔いの回った口調で話す。 「ねーねー、これから発表?」 「そーじゃねーの」 「ふーん…ベストデザイン賞、取れるといーね」 これは、あたしの本音。 他の誰かに取られるなら、富田に取って欲しいな、そんな事を思いながら、あたしはまた、シャンパングラスを手にした。 『今年度のベストデザイン賞の発表です』 「富田 由さんです!!」 『数々の完売記録、各出版社からのオファーは過去最多、カリスマ性のある独特なデザインが幅広い世代で大人気の、 あの ゛free ″の人気デザイナー、富田 由さんです。どうぞ、ステージにお上がりください!!』 隣のスポットライトを浴びてる富田を、あたしは見つめた。 「富田……あんた、やっぱ…すごいね」 「当たり前だろ、バーカ」 言いながら、富田はくしゃっと笑った。 .
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