14224人が本棚に入れています
本棚に追加
ステージの上で、トロフィーをもらってる富田の姿を眺めた。
あたしはなんか、不意に寂しくなって。
やっぱ富田とは、住む世界が違うよーな気がした。
同じデザイナーだけど、あたしなんか全然ダメで、こんな賞なんて一生かかっても取れっこない。
あたしは、中身のなくなったシャンパングラスをテーブルに置いて、まだ暗い会場を抜け出した。
太陽が隠れて、少しずつ暗くなり始めた空を見上げた。
もー、帰ろっかな……。
そんな事を考えながら、クラッチバッグの中から煙草を取った。
『このよーな賞を頂けて、本当に嬉しく思います。この場を借りて、日頃から世話になってる、俺のデザインチームのみんな、デニム工場の社長、出版社の方、それから……
゛darling ″のデザイナーの松岡 まこ。
俺に関わってくれた全ての人達に、感謝します。ありがとうございました』
会場の中から聞こえた富田の声と、大きな拍手を聞いてから、あたしは歩き出した。
.
最初のコメントを投稿しよう!