躊躇い

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ぼつぼつ雫を落として来るそれに、あたしは高そーな富田のジャケットを脱いだ。 裏返しに丸めたジャケットを、胸の前で抱き締めながら走って。 「てか…ハァ…もー、無理」 飲み過ぎて、目が回る…気持ち悪っ…。 コンビニの軒下に入って、上を見上げた。 止まない……か…。 濡れたドレスの裾から、ポタポタと垂れてくる水に、顔を歪ませながら大きな溜め息を吐いて、また歩き出した。 ちょっと濡れんのも、いっぱい濡れんのも同じでしょ。 気持ちいーぐらい降って来る雨に、あたしは顔を上げて歩いた。 そのままプールでも入ったの?ってくらい濡れたドレスは、あたしが歩く度にマンションの階段に水玉模様を作って。 「おせーよ」 聞こえた声に顔を上げると、階段に富田が座ってた。 「わっ、あっ…!!」 .
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