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何なの…ホントに…。
黙ってないで、なんか言ってよ。
あたしは、自分が写る、目の前のブラウンの瞳を覗いた。
「お前…俺に、なんか言う事ねーの」
口調はいつもと同じだけど、なぜかものすごく優しい表情で。
「なんか…って、何?あっ、先に帰った事、謝れって?」
「バーカ…ったく…」
「いったーい!!何すんのー」
「うるせーよ、さみーから早く鍵開けろ」
あたしは、富田にデコピンされたおでこを押さえながら、さっさと階段を上がっていく富田の後を追った。
「ちょっとー、痛いんだけど、てか、帰ればいーじゃん、家近いんだから」
「あ?雨降ってんだろ。それに俺、腹減ってんの、なんか食おーぜ」
「はぁ!?あたし、ラーメン屋で食べてきたし」
「お前、そのカッコでラーメン屋かよ、ホントに…女じゃねーな」
部屋の目の前で、富田はあたしのクラッチバッグから鍵を取って、勝手に部屋の中に入った。
あたしは、また一つ、大きな溜め息を漏らしながら真っ赤なパンプスを脱ぎ捨てた。
「はいはい、どーせ女じゃないですよー、ったく…女じゃないあたしを抱いたのは、どこのどいつだって…」
「あ?何だよ、ヤりてーなら早く言えよ」
立ち止まって振り返った富田に。
玩具なんか…もー、やだ。
ちゃんと、愛されたい。
愛して欲しいよ……由、あんたに。
そー言えたら、どんなに楽か。
「バーカ、絶対、あんたとはシないから」
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