躊躇い

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「あー、すげぇ疲れたー」 ジャケットを脱いで、床に放り投げた富田はベッドに横たわった。 「ねー、トロフィーとかは?」 「あー、会社のヤツに渡した」 ゛あんなの邪魔になるだけだろ ″ なんて言いながら、ベッドの上での富田は、蝶ネクタイを外して、シャツのボタンを2つ開けた。 「あ、俺ビール」 冷蔵庫に向かったあたしに、富田の声が届く。あたしは2本の缶ビールを持って、ベッドに腰かけた。 「はい、どーぞ」 「サンキュ」 すぐにプルタブを開けて、富田の前に差し出した。 「賞、おめでと、乾杯」 「おー、ありがとな…」 富田は少し照れ臭そうに、乾杯してから一気に流し込んだ。 「っ…へっくしょん…、さむっ」 雨に濡れたせーで冷たくなった身体。自分で抱き締めるみたいに、両肩をさする。 テーブルに缶を置いて、立ち上がりながらベッドに居る富田を見下ろした。 「あたしシャワー入ってく……」 るから…。言い切る前に、富田の右手が、あたしの左手を掴んだ。 .
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