終わりのキス

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目を覚ましたら、がっちりと、あたしを抱き締めて眠る綺麗な顔。 この人が…彼氏なんだ、そんな事考えてたら、途端に照れ臭くなって。 「んー」 動き出した富田に、目を閉じて寝たフリをした。 「…まだ、寝てんのかよ」 聞こえてくる独り言に、笑いを堪えて。 「あーあ、つまんねーから、余所の女とシてこよっかなー」 「へぇっ!?」 慌てて目を開けたら、目の前の顔は、しっかり笑ってて。 やられたー、絶対、騙したな。 「あ?どーした?なんか聞こえた?」 「別に…」 言ったあたしの視界いっぱいに、綺麗な顔が近付いて、唇を奪った。 「おはよーのキス」 いつかの朝と同じよーに、あたしの大好きな、くしゃって笑う笑顔を見せた。 あー、もー、その顔…好き。 「まーこ」 少し掠れた低い声も。 「なー、腹減った、カレー作れよ」 ちょっと、いや、かなり俺様なとこも。 「お前、聞いてんの?」 言いながら、頬っぺたに触れた、その大きな手の感触も。 「シカトかよ、いー度胸してんな」 口の悪いとこも、全部。 「もー、聞いてる!!………好き…」 終わりのキスがあったから、始まりのキスがあって、今がある。 「朝から誘ってんじゃねーよ、バカ」 「じゃー、不味いカレー、作るかー」 .
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