14224人が本棚に入れています
本棚に追加
目を覚ましたら、がっちりと、あたしを抱き締めて眠る綺麗な顔。
この人が…彼氏なんだ、そんな事考えてたら、途端に照れ臭くなって。
「んー」
動き出した富田に、目を閉じて寝たフリをした。
「…まだ、寝てんのかよ」
聞こえてくる独り言に、笑いを堪えて。
「あーあ、つまんねーから、余所の女とシてこよっかなー」
「へぇっ!?」
慌てて目を開けたら、目の前の顔は、しっかり笑ってて。
やられたー、絶対、騙したな。
「あ?どーした?なんか聞こえた?」
「別に…」
言ったあたしの視界いっぱいに、綺麗な顔が近付いて、唇を奪った。
「おはよーのキス」
いつかの朝と同じよーに、あたしの大好きな、くしゃって笑う笑顔を見せた。
あー、もー、その顔…好き。
「まーこ」
少し掠れた低い声も。
「なー、腹減った、カレー作れよ」
ちょっと、いや、かなり俺様なとこも。
「お前、聞いてんの?」
言いながら、頬っぺたに触れた、その大きな手の感触も。
「シカトかよ、いー度胸してんな」
口の悪いとこも、全部。
「もー、聞いてる!!………好き…」
終わりのキスがあったから、始まりのキスがあって、今がある。
「朝から誘ってんじゃねーよ、バカ」
「じゃー、不味いカレー、作るかー」
.
最初のコメントを投稿しよう!