彼の居る日常

5/11
前へ
/340ページ
次へ
「お疲れー」 フロアからみんなが帰るのを見送って、ヒップポケットから携帯を取り出す。 「お疲れ」 2コールで聞こえた声に、待っててくれたのかな? なんて、ちょっとニヤける。 「お疲れ、そっち終わった?」 「あー、終わった、下で待ってろ」 「うん、わかった」 パソコンの電源を落とした後、バッグを掬い取ってフロアを後にした。 エントランスに辿り着くと、すぐに見つけた後ろ姿に声を掛ける。 「富田っ、ごめん、お待たせ」 「おせーよ、はい、ペナルティ2」 「は?なんで?」 「俺を待たせたのと、名前」 あー、また、やっちゃった。 長年の癖で、ついつい ゛富田 ″ そう呼んじゃうあたし。 「ごめーん、またさ、不味いカレー作るから許してー」 「バーカ、お前さ、カレーばっかじゃ飽きるっつーの」 「ハハハッ…そっか」 「帰るぞ」 強引に取られた手、ちょっと緊張しながらその手をぎゅっと握った。 .
/340ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14224人が本棚に入れています
本棚に追加