唇の温度

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あ、服…着ないと。 クローゼットを開いて、ぎっしり詰め込んだ引出しの中から、タンクトップを引き摺り出す。 下は…これでいっか。 部屋着の短パンを履いてから、煙草を一本手にした。 ライター、ライター…あった。 同時にインターホンが鳴って、慌てて煙草に火を点けて、加えたままドアを開けた。 「お前…加え煙草で出迎えかよ…」 「悪い?」 白い煙を吐き出しながら、悪態をついた。 「ちょっと上がるぞ」 ドアを思いっきり開けて、中にズカズカと入ろうとする富田の腕を掴んで。 「無理っ!!ちょっ…汚ないから!!」 「大丈夫だって、いつもの事だろーが」 ネイビーのスリッポンシューズを脱いだ富田は、あたしの手を振り切って勝手に部屋の中に入って行った。 本当に……何なの コイツ。 一つ溜め息を吐いてから、その後を追った。 .
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