唇の温度

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飲み始めてから数時間、ローテーブルに並べられた空き缶の数が半端ない。 「お前も飲むかー?」 冷蔵庫にビールを取りに行った富田の声。 「いるー」 ゛はいよ ″ 渡された缶ビールのプルタブを勢いよく開けて、流し込む。 ぷはー、やっぱ旨いわ ビール。 てか、普段あたしが飲んでる発泡酒とは比べ物にならないわ。 パンチが違うよね、パンチが。 給料日前なのにビールなんて気前が良いな、富田。 「お前いい飲みっぷり…アハハッ」 「そう?」 言いながら、また勢いよく流し込んだビールが、口の端から少し溢れた。 伸びてきた富田の手が、あたしの視界に入った。 「何?」 言いながら、そっちを向いたあたしの頬っぺたに 富田の手が触れる。 「富田…どーしたの?」 さっきまでケラケラと笑ってた筈の富田の顔には、もう笑顔はなくて。 今は…少しだけ目を細めて口角を上げた表情。 .
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