唇の温度

9/21
前へ
/340ページ
次へ
「…ッ…ンッ…」 目の前の唇は、食べるみたいにあたしの唇に触れる。 何がどーなってんだか、訳の解らなくなった頭で、一度唇を離そうとしてはみたものの、後頭部を大きな手でがっちり押さえ付けられた。 「…ンンッ…」 何度も角度を変えては、厭らしい音を立てて吸い付く唇。 「…アッ…」 押し込められた舌に、思わず漏らした自分の声が、いつものハスキーな声よりも半音高くて 恥ずかしくなった。 「ヤッ…ンッ…」 ゛やめてよ ″あたしの声は声にならなかった。 舌を絡ませようとする富田に抵抗して、口を閉じようとしてみたり。 そんなあたしの願いも虚しく あっという間に舌を絡め取られた。 「…ハッ…ンッ…アッ…」 どのぐらいキスしてたんだろ。 酸素の行き届かない頭、何度も重ねるキスはアルコールよりも強いスパイスにしかならなくて。 富田って…キス上手いんだね…。 なんか…意外かも…。 朦朧とする意識の中で、そんな事を思った。 .
/340ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14215人が本棚に入れています
本棚に追加