唇の温度

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トイレから戻って来た富田は、さっきのキスなんか まるで無かったかのように、また飲み始めた。 もー、意味わかんない…。 考えるのが めんど臭くなったあたしは、とりあえずビールを飲む。 飲んで忘れよう。 まぁ、あたしの悪い癖。 それから流し込んだビールは、びっくりするくらい味がしなかった。 「俺、帰る」 「んー」 ベッドの上で目を瞑ったまま、見えない富田に向かって手を振った。 「鍵、締めてポスト入れとくからな」 「んー」 「ったく…飲み過ぎなんだよ…」 ギシッと小さく聞こえたベッドのスプリングの音、ゆっくり目を開けると近付いてくる顔。 「おやすみ…まこ」 あたしの唇に触れるだけのキスを落として帰って行った。 .
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