唇の温度

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鍵が締まる音で、富田が帰って行ったんだ…と、酔った頭でも解った。 天井を眺めたまま、人差し指で唇を触る。 まだ ほんの少し残る 富田の熱。 トクン…トクン…と 心なしか、いつもより早い鼓動は抑まらないまま。 「…何なの…ホント…バッカじゃない」 温度の上げられた あたしの唇から漏れたのは溜め息と、これっぽっちも可愛くない台詞。 散々飲んだから、さぞ深い眠りにつけると思ったのは 大間違いだった。 浅い眠りを何度も繰り返して、目を覚ます度に思い出すのは…富田のキス。 もう何度目かの それをやり過ごしたくて、また缶ビールを飲んだ。 .
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