唇の温度

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「お待たせー!!こちら、松岡まこちゃん」 和美の声で振り返った男達に、とりあえず頭を下げた。 「どーも」 笑顔のない顔で、気だるそうに挨拶したあたしに、和美は肘で小突く。 「ちょっと!!まこ、少しは愛想笑いぐらいしてよ!!今日のメンバー当たりなんだから!!」 合コンのメンバーに、当たり外れがあるらしい。 「あー、ごめんごめん」 空いた席に座らされて、バッグの中を探る。 煙草…煙草…、あれ?忘れた? 「まこちゃんだっけ?何飲む?」 隣から掛けられた声に、バッグから視線を上げた。 ゛僕は誠実です ″ って顔に書いたよーな整った笑顔を貼り付けて。 「あ、ビールで」 「ビールね、了解」 歯並びの良い 真っ白な歯を見せて、後ろから キラーン って効果音が聞こえて来てしまいそうな笑顔をあたしに向けた。 あー、なんか胡散臭い。 その整い過ぎた顔に、無性に胡散臭さを感じながら、また視線を落として煙草を探した。 .
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