唇の温度

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運ばれてきたビールのジョッキを傾けて、目の前の料理を口に入れる。 あ、うまっ。 いつもの行きつけの居酒屋とは全然違うお洒落なメニュー。 店の雰囲気に期待した通りの、創作料理だった。 周りの女子達は、料理を取り分けたり、上目で男に媚びを売ったり、可愛らしいカクテルを飲んだり…本当に忙しそうにしている。 「あー 酔っ払っちゃったぁ」 両手で頬っぺたを押さえて、甘い声を出す和美の女友達に、笑いが込み上げる。 本当に酔ってたら、んな事言わねーよ。 心の中で毒を吐いてから、ビールを飲み干した。 「まこちゃんも28歳?」 ゛まこちゃん ″ なんて呼ばれたの何年ぶりだろ? 最後に呼ばれたの、従姉妹の結婚式で親戚の叔父さんに呼ばれた時か…。 「そう、28」 「そっか、じゃあ…僕の2つ下だ」 へぇ…あんた、30なんだ? 落ち着いてるから、もうちょっと上かと思った。 なんて、和美に怒られるから、決して口にはしないけど。 「ごめんごめん…またビールでいい?」 「あ、どーも」 .
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