唇の温度

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「あぁ、そうだ…」 高そうなジャケットの内ポケットに手を入れて、出てきたのは主張し過ぎないブランドの名刺入れ。 その、センスの良い名刺入れを眺めた。 一連のスマートな動きは、律儀に名刺を差し出す。 「これ、僕の連絡先」 「どーも」 受け取った紙切れの名前を見る。 「桐山 遥…? 女みたいな…名前」 隣の男は、あたしの呟いた言葉に笑った。 「そう、はるか。よく言われる…女みたいな名前だって ハハハッ」 「だろーね」 「まこー、あんたもカラオケ行くでしょ?」 手を洗いながら、鏡越しにトイレから出て来た和美を見る。 「行かない、帰る」 「なんでよー?まこ、隣の遥君と良い感じだったじゃん。連絡先聞いた?」 「あー、名刺もらった。今度治療しに来いってさ」 「嘘ー!!まこ、やったじゃん!!」 「は?タダで治療してもらいに行くだけだから」 「まこ!!あんた、本気で言ってんの?あんなにカッコ良くてお金持ちの人なんか、そーそー見付からないからね?」 ゛とっとと、お持ち帰りされて既成事実作りな!! ″ その言葉を残して、和美はトイレから出て行った。 はぁ…既成事実って、Sexしろって事? .
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