唇の温度

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「夜なら比較的予約取れるから、連絡して?」 「あ、うん、わかった」 「じゃあ 連絡待ってるよ」 合コンご一行様は このあとカラオケに行くらしい。 誠実を絵に書いたよーな彼は、帰ると言ったあたしを、わざわざ駅まで送ってくれた。 「じゃあ」 駅の改札で、一つ手を上げて踵を返した。 「まこちゃんっ」 スイカを通し終えたあたしは、改札の中から振り返る。 「何ー?」 「今度、二人で飲みに行かない?」 それ、わざわざ引き止めて言う事じゃないでしょ。 「いーよ、今度ね」 「ごめん、引き止めて。また」 真っ白な歯を見せながら 片手を上げた彼に、あたしは ほんの少しだけ微笑んで見せた。 「じゃーねー」 ザワザワ騒がしい駅の雑踏の中へ、一人足を進めた。 .
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