日常

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「まこちゃん、お疲れ様。麻酔が切れたら痛むと思うから、痛み止め飲んで」 「わかった」 あたしは、人生で2度目の親知らずを抜いた。 「今日、もうこれで終わりだから送って行くよ」 「今日は約束してるから大丈夫」 「もしかして……彼氏出来た?」 「出来てないけど」 「そっか…何だか最近のまこちゃん、すごく綺麗になったから」 化粧品を変えた訳じゃないのに、綺麗になったなんて、この人の目は きっとどうかしてる。 こんなに冷めてるあたしに、相も変わらず好意を持ってくれるのは、よっぽどのMなのかと疑わざるを得ない。 「電話」 「電話?」 「出てくれなかったから…まこちゃんに嫌われたかと思ったよ」 「あー、友達と飲んでたから。ごめんね」 だって、それは富田とSexしてたから。 まさか、甘い声を出しながら電話に出られる訳がない。 「そっか。声聞きたい時に、また掛けてもいいかな?」 「うん。じゃあ、あたし帰る」 「気を付けて」 診察室を出ようとしたあたしを、彼は一度抱きめた。 腕の中で、富田の香水とは違う 高級そうな大人の匂いがした。 .
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