14215人が本棚に入れています
本棚に追加
金曜の夜、三十路手前の独身女が飲みに行く場所なんて限られる。
やっぱり辿り着くのは、いつもの居酒屋。
「まこは?」
酒飲んだら…麻酔切れるかな?
ま、いっか、痛み止め飲めば。
「ビール」
あたしの頭の中は、今期のセールの事でいっぱいだ。
昨日まで定価だったそれが、今日から半額なんて、ホントにバカげた話し。
正直、゛darling ″ は安くはない。
生地だって、縫製だって、妥協はしたくないから、そうすると それなりに値段も張る。
それでも、その一着を手にして買ってくれたお客さんに喜んでもらいたい。
流行りだけでワンシーズン着回して終わり…なんて心底寂しい。
少しでも長く着て欲しいと思うし、その人がクローゼットを開けた時、自然に手が伸びる服でありたいと願う。
きっと、こっち側の人間はみんなそう思ってる。
「…こ、ちょっと、まーこ!!ビールきたよ」
「あ、ごめん、お疲れー」
.
最初のコメントを投稿しよう!