小さな変化

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なかなか来ないエレベーターにイライラしながら、携帯の時間を見てやり過ごす。 ったく、誰だよ、最上階に行ったのは。 やっと来た箱に乗り込むと、富田が居た。 「お疲れー」 先に声をかけたあたしに、富田は少し機嫌の悪そうな顔で。 「おー」 なんだ、ホントに機嫌、悪いんじゃん。 富田の担当するブランドも、秋冬のサンプルが上がって来たらしい。 「なー、これから?」 「そー、デート」 キャッチボールにならない会話に終止符を打った後、開いた扉から降り立つ。 「富田、じゃーねー」 歩き出すと、エントランスのガラスの扉から見えた見覚えのある左ハンドル。 あーあ、待たせちゃったか…。 その車に向かおうと、少し足を早めた時、腕を掴まれた。 掴んだのはもちろん、富田だろう。 あたしの腕に触れた感触で解ってしまったから。 .
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