小さな変化

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高層マンションの最上階の部屋。 あー、やっぱ歯医者って、金持ちなんだ。 自分がちっぽけに思えるくらいの夜景が、リビングの窓から見えた。 「ねー、すごいね、夜景」 「そうだね。でも、一緒に見る人が居ないから寂しいよ…ハハッ」 彼は自虐的に言って苦笑いをした。 「なんで彼女居ないの?」 「ハハッ…まこちゃんが好きだからだよ」 その言葉と一緒に、あたしを抱き寄せた。 トクン、トクン、と彼の左の胸から聞こえる音は、あたしよりも少しだけ早い。 「そろそろ…僕の事、見てくれると嬉しいんだけど…」 顔が良くて、金持ちで、誠実な人。 こんな人ならきっと、親も安心するんだろーな。 あたし、彼に、恋できるかな? 彼の事を…愛せるのかな? 「遥君は、あたしにはもったいないよ」 「まこちゃんは…好きな人居るの?」 そう聞かれた時、一瞬、富田の顔が浮かんだ。 違う。好きとかじゃない。 多分、身体を重ねる事で、情が湧いただけ。 「居ないと…思う」 「じゃあ…僕の彼女になってよ」 .
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