小さな変化

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「お前、何時だと思ってんだよ…ったく」 あの電話の後、やって来た富田を部屋の中に入れた。 部屋に入るなり、富田はイライラした様子で煙草に火を点ける。 ジッポのオイルの香りが部屋中に充満した中で、あたしはぼんやりと煙を見てた。 「で、歯医者と何かあったのか?」 「告白…された」 「あ?良かったじゃねーか、歯医者、好きなんだろ?顔が良くて、金持ちで、お前にはもったいないくらいだな…ハハハッ」 声を出して笑った後、煙草を灰皿に押し付けて。 ベッドに腰かけるあたしを、真っ直ぐに見る富田と視線がぶつかった。 「ねー、富田…」 なんで、そんな、顔してんの? どーして、そんな、寂しそうな顔するの? 玩具…取られるの、そんなに嫌? あたし達さ、身体の相性、いーみたい。 「富田ー、この関係…続けてあげるよ」 「バーカ、当たり前だろ。お前の身体は俺のだって言ったろ」 そう言って、あたしに向かって くしゃっと笑って見せた後、またすぐに煙草に手を伸ばそうとした富田に、あたしは近寄ってキスをした。 .
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