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「ごめんっ!!お待たせ」
「おせーよ」
機嫌悪そうに煙草を吸いながら、富田は言った。
「今日、お前の奢りな」
「えー、遅れたのちょっとじゃん!!」
「あー、うっせぇ、とにかくお前の奢り。こないだ俺の大事な顔にビンタしたツケだ」
「うっ…。あの時は…その、本当にごめん…」
「あー、いーよ許してやるから。今日は飲むぞ。お前ビール?」
そう言って、富田は笑って、あたしはその笑顔に胸を一つ高鳴らせた。
「あ、うん…」
飲み始めてから、デザインの話しをしたり、他愛もない話しを富田とした。
富田と過ごすこの空間が、すごく心地好くて、やっぱりあたしは飲み過ぎて。
どのぐらいの時間、一緒に飲んでるんだろう。
ふと、携帯の時計を見れば 11:11分。
何にも、良い事なんか…ないか。
さっきから、あたしの瞳に写る富田は、いつもより少し優しい眼差し。
勘違いも甚だしい。
そんな事、百も承知。
だけど、目の前で煙草を吸う その指に触れて欲しい。
ビールを流し込んだ その唇にキスして欲しい。
そんな事を頭の中で考えながら、富田をぼんやりと眺めてた。
「どーした?酔った?」
「あ、ごめん、ちょっとトイレ」
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