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僕は依頼を引き受けたことを早々に後悔し始めていた。
熱意に打たれて押し切られる形だったとは言え、保証もできないことを保証までしてしまう軽率っぷりに、我ながら呆れてしまう。
何とかして彼女の要望に応えてあげたいという気持ち。
応える努力が、自分の首を絞めることになるというジレンマ。
僕は胸の中のもやもやをゼンマイ動力にするブリキのロボットのように、ミドウ筋をとぼとぼと歩いていた。
「タケオじゃないか」
行き過ぎて振り返った人物が僕に声をかけた。
呼ばれて振り返った僕の目には旧友の笑顔。
ヨウスケだ。
「久しぶりだな、元気してたか」
社交辞令が口を吐いて出る。
本当に相手の健康を慮ってではない、もはや習慣化しているだけの挨拶に、ヨウスケは真面目に受け止めて返してくれる。
「ああ、ぼちぼち元気だ。タケオは何だか元気そうじゃないな。どうかしたのか」
「別になんでも……。いや、ちょっと気にかかることがあってな」
「よければビールでも飲みながら話を聞こうか。 この後は空いてるか」
「ありがたいが、お前は大丈夫なのか」
「旧友の困った顔を見過ごせるほど、俺は冷たい人間じゃないぞ」
彼は真剣な顔でそう言った後、表情を崩してさらに続ける。
「というのはまあ口実で、今日は定休日なんだがちょっと用事があって店に寄っててな。わざわざ出てきたし晩飯をどうしようかと迷ってたところなんだ」
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