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こんな豪快な兄貴だか、ふーこちゃんの前では態度が一変!
若い頃の武勇伝を楽しそうに話す。
ふーこちゃんは、その話が大好きで、笑いながら聞いている。
特に、ガキの頃の冒険談…川での探検!
「いいなぁ~私もそのアメリカ探検に行きたかったなぁ~。」
「元気になったら連れて行ってやるよ!」
そう言って、兄貴はふーこちゃんに笑いかけた。
ふーこちゃんは突然悲しそうな表情を浮かべた。
「元気に…か…
私…もうダメかも…
心臓…今まで保ったのも奇跡に近いの…
移植するしかないんだって私の心臓…
日本じゃ手術無理だから私…本当にアメリカ行かないと助からないの」
俺を抱く力が少し強まる。
苦しいんですけど🐱ニャーン
俺の鳴き声に
「あ!ゴメンね、永吉!」
そう言って力を緩めてくれた!
「行けよ、アメリカへ
手術したらたすかるんだろ?」
兄貴の言葉に、力なく首を横に振る。
「莫大な費用がかかるし、私の体に合うドナーがすぐに見つかる保証はどこにもない…待ってる間に亡くなった人、たくさん見てきたから…」
「あきらめんなよ!一つでも助かる道があるなら」
ふーこちゃんは、怒鳴るような兄貴の声に驚きながら兄貴を見つめた。
「生きろよ
、お前のいない人生なんて、考えたくない。費用は俺がなんとかしてやるから。
行ってこい。誰かの元気な心臓…貰ってこい。」
「ヒロさん…」
ふーこちゃんの目から涙が溢れる。
兄貴は、そっとふーこちゃんの肩を抱き寄せた。
ふたりを見守る俺は思った。
兄貴が怖いものなんて、きっと何一つ無いだろう…
ただひとつあるとしたら、ふーこちゃんを失うことなんだろう…
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