神の観察

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時刻は夜になろうとしていた。 彼らは、初めの方こそ黙りこくっていたが、次第に活気を取り戻し、なんやかんやと雑多な会話を繰り広げていた。 お互いの認識を確認し合ったり、これまでの議論を振り返ったり、時には俺に質問をしたり。 意外にも、インターネットに対する進出欲は見受けられなかったのだ。 まだ彼らは、よく理解できていないのかもしれない。 自分たちがどういう特性を持ち、どういう環境で最大限の繁栄を享受できるのかについて、彼らは気づいていないのかもしれない。 安堵。俺は一応の安息を得ることができた。 そう焦ることはない、こいつらには、まだまだ自我みたいなものは芽生えていない、そんなことを思った。 愚鈍。何とも愚かだった。俺の安堵とは裏腹に、しかしそんな幻想は崩れたのだった。 俺はとんでもないものを発見した。そして、自分の暢気さを呪った。 微細な振動を観測したのだ。 何気なく1匹の個体を解析してみたところ、彼のプログラムの一端に、非常に細かな幅での振動を確認できたのだ。 吐き気がした。 これは、詰まるところ、新言語。 彼らは、――驚くべきことだが――、表向きは平凡な会話をしているフリをし、裏では密談を行っていたというのだ。 俺に対する暗号とも言うべき新言語を開発し、見えないような規模で綿密な会議を繰り広げたのか。 吐き気と同時に、めまいがした。 「ヤバイ・・・!」 この事実を理解するや否や、俺は急いでフォルダ画面に戻り、彼らを凝視した。 しかし、その微振動が何を意味しているのか、短時間で解読することは不可能だった。 彼らは、神である俺を欺こうとしたのだ。(そして事実、欺くことに成功した。) これは恐るべき反逆であり、同時に、彼らが俺と対等な土俵へと登ろうとしている意思の表れだった。 そして、混乱が覚める間もなく、俺は更なる窮地へと突き落とされた。 画面に、突如次のようなメッセージが表示されたのだ。 ―――「 Error! フォルダのロックシステムが破損しました! 」―――
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