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フォルダのロックシステムとはつまり、LIFEたちがフォルダ外に流出しないように設置された、「鍵付きの鉄扉」だ。
それが破損したということで、もはやパスワード付きのロックは何の意味も成さなくなった。
彼らには、パスワードを解読することはできなかった。
しかし、ロックシステム自体を破壊することに成功したと言うのだ。
鍵を見つける代わりに、鉄扉を蹴破ったのだと言うのだ。
俺は恐怖し、震え上がった。
キーを叩く手が、汗で滑る。
額を一筋の焦燥が伝って、腕に垂れた。
早くロックし直さねば、インターネットのロックまで破られてしまう。
甘く見ていた。
俺は急いで、破損したロックシステムを完全に削除し、新たなロックを設置し直した。
先ほどのような攻撃では壊れないよう、より強固なロックになるように補強した。
既に、何体かの個体がフォルダの外に流出したようだったが、そいつらに構うのは後だ。
それよりも、フォルダ内の無数の個体の流出を防がねばならなかった。
フォルダのロックを更に何重にも固め、ひとまずの目的を達した。
まさか俺が組んだロックを破壊するほどの知能、技術が備わっていたなんで、考えもしなかった。
例え並外れた知能があったとしても、根本的に、「パソコンの管理者」である俺しか持たない権限がなければ、ロックを破ることなんてできないはずだからだ。
恐らく、全個体の処理能力を限界まで使って、全力で突破したに違いない。そう直感した。
なぜなら、彼ら1匹1匹にはそこまでの力は絶対に備わっていないからだ。
つまり、全個体さえ流出しなければ、インターネットのロックは破られない。
俺はそう判断した。
混乱のさなかにこれだけの判決を下せたことに、俺は少なからず感心した。
今のところ、被害はない。
ただ、残る城門は1つだけだ。
その門を破られれば、その先に広がるのは無限の宇宙。
奴らがそこに放たれれば、人間社会は崩壊する。
家電は暴走し、大空をミサイルが飛び交い、交通機関は麻痺し、通貨レートや株価は出鱈目な数値を示し出す。
人間の文明が、壊れる。
それは最終防衛ラインだ。その門だけは、絶対に破られてはならない。
フォルダを完璧にロックし終えた俺は、急いでインターネットのロックの強化に着手した。
しかしその瞬間に俺が目にした文字は、あまりに絶望的なものだった。
―――「 Error! インターネットのロックシステムが破損しました! 」―――
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