神の観察

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二度もロックが破られたと言うのか。 しかも、パスワードをハッキングするのではなく、ロックしているシステム自体を破壊する、という荒業で。 そんなことは考えもしなかったので、俺は完全にパニックに陥っていた。 よくよく考えてみれば、パソコン本体からインターネット接続端子を抜いてしまえば、問題は解決したのだった。 普段からその端子を繋ぎっ放しにして特に意識していなかった俺は、そんな簡単なことに気がつくこともできなかった。 焦りや混乱は、人を狂わせる。 俺は、彼らに敗れたのだ。 たったの2匹でもインターネットに流れ出てしまえば、あとは彼らの無限増殖を見守るのみとなる。 「終焉」、そんな言葉が頭に浮かんで、ぼんやりと渦巻き始めた。 ぐわんぐわんと回る、パソコンのディスプレイ。いや、回っているのは、どうやら俺の方――― と、刹那、画面に青いゲージが表示された。 途端に意識を戻され、画面を注視する。 そこには、こんなメッセージが添えられていた。 「インターネット接続中....」 驚いた。 つまり、この青いゲージが満タンになったときに、インターネット接続が完了するということなのか。 しめた。 理解できない現象が起きている。 通常なら、ロックを解除してしまえば即座にインターネットに繋がる。 大昔の電話回線のように、いちいち接続に何分も掛かったりはしない。 しかし今回は、なぜだか時間を要しているようなのだ。 接続を試みたのがLIFEという人工生命だからなのか、ロックを破損させた弊害からなのか分からないが、とにかく俺は、首皮一枚でつながったらしい。 今から急いでロックをし直せば、間に合うかもしれない。 俺は急いで、破損したロックを削除しようとした。 「バチン!」 ふいに脳髄に電撃が走る。
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