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ただし、まだまだ抜かりもあった。
奴らの誤算は、インターネットの仕組みに関してである。
俺の認識は「インターネットに接続された瞬間に敗北」というものだった。
したがって、「インターネットのロックシステムが破損しました!」というメッセージを見た瞬間に、俺の敗北は決定したのである。
ここに奴らとの認識の差異があった。
どうやら奴らは、先のフォルダと同様に、俺が、奴らの流出を最小限に食い止めようとロックを掛け直しに来る、と読んでいたようだ。
そこで命運が分かれた。
俺に言わせれば、一瞬でも最後の城門を突破された時点で、王は死んでいるのだ。
その後にロックを掛け直す行為は、だから全くの無駄な行為でしかない。
奴らは焦ったことだろう。
先ほどと同じ手順で完璧に俺を騙したはずなのに、今度は解除が為されない。
実際にロックを解除する手段は持たないのだから、奴らはそこで立ち往生するしかない。
そこで取られた苦肉の策が、「インターネット接続中....」という最後通告だ。
そのゲージが溜まるまでは、猶予がある。
そう俺に思わせることで、ロックを解除、再強化させようとしたのだ。
こうして振り返ってみると、非常に危ういところまで追い込まれていたようだ。
あと1歩で、俺は人類を裏切った大罪人に成り下がるところだったのだ。
気がつくと、シャツの背中がじっとりと湿っていた。
いつの間にか足は震えていて、そして額には無数の汗が伝っていた。
だが手に垂れたのは、今度は一筋の安堵だった。
乗り切ったのだ。
俺はLIFEの強襲を、乗り切った。
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