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「……だん…な…」
俺は倒れるように旦那の傍らに跪いた。
もう体が支えられなくて、でも伝えたい事がいっぱいあって、それが言葉にならなくて。
「…だんな……っ……」
旦那の手が、その胸に鈍く光る六枚の通寶に触れた。
「…すけ、…に…やる……」
それは三途の川の渡し賃。
旦那は身分の低い俺にそれを譲ろうとしている。
「俺…様…忍、だよ…」
首を横に振って、笑って見せるのでいっぱいいっぱいだった。
俺は旦那にあっちの世界に逝っても幸せになって欲しい。
六枚あるんだから、半分ずつじゃダメかな?
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