キングの目覚め

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学校の終わりを告げる鐘が鳴る。ようやく長い一日が終わった…。 さあ帰って何しようかなウフフ、と俺はウキウキ気分で鞄を肩に掛け、足早に教室を…、 「おい、こんにゃろー森田ァ!ちょっと待ちやがれっ!」 出ようとしたところで、バカ岡に肩を掴まれた。 嫌な予感がする。 俺の肩を掴んでるバカ岡の腕を掴んで捻り上げたい…。 しかしそこはグッ、と堪え、俺は口元を引き攣らせながら、なんとか笑顔を作る。 「な、なんすか?花岡くん」 「今日は山内の奴と喧嘩があるっつっただろ!仮にもオメー、樋口君の下についてんだろ!参加しろ参加ァ!」 やだ、それ困る…。喧嘩なんかしたら、一瞬で大学進学の夢が…! 今は先生にも割と気に入られて、なかなか良い調子できているのだから。 「サ、サーセン…俺、今日はちょっと塾がありまして…」 俺の言葉に、バカ岡は鳩が豆鉄砲くらったようなアホ面をした。 やばい、面白いじゃないか…。 「じゅ、じゅくだァ…?オ、オメー、そんなもん行ってんのか、すげぇな…」 「恐縮ッス!!」 さすがバカ岡。なんだか塾をとてつもなく凄いものだと思っているようだ。 今のうちに逃げる事にしよう。 「じゃあ、そういう事なんで失礼するッス!」 と、俺が笑顔で踵を返した瞬間、再びバカ岡に肩を掴まれた。 「待たんかい!!いいから行くぞ!今日はじゅく休め!俺が休むって電話してやっから!!」 「こ、困ります花岡くん!」 俺とバカ岡がそんなやり取りを繰り広げていると、いつの間にか後ろに立っていた樋口が、バカ岡を制止する。 「樋口君!」 「ひ、樋口くん…」 樋口は、俺を見ることは一切せずに、花岡だけに視線を向けていた。 「行くぞ、花岡。そいつは誘わなくてもいい」 「え?そう…か、そうだよな!森田、へタレで弱ぇし」 と、言って樋口たちは何人か引き連れ、教室を出て行ってしまう。 勝手に喧嘩でもなんでもやってろ。喧嘩なんてやっても何の得にもならないのにな。 まぁ、俺には関係ないし。さあ、帰ろうっと!
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