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謎の獣
その日、雅美の夢に例の少年が再び現われた。
寂しそうに雅美を見つめる。
『ねぇ‥‥何か言いたいんじゃない?』
少年は黙って寂しそうに雅美を見つめていた。
『行かなくちゃ』
ふいに少年が口を開いた。
『もう行かなくちゃ。あの人が呼んでる。行かなくちゃ』
走りだそうとする少年の腕を雅美は思わず掴んだ。
『待って!行くってどこに?』
『僕は、やりたくないのに。あの人の命令だから行かなくちゃ…ごめんね』
少年は雅美の手を振りほどくと走り去った。
「待って!」
汗びっしょりになって雅美は目を覚ました。
喉が渇いたので、リビングに下りる。
途中、両親の寝室の前を通った雅美は、ふと足を止めた。
ピタリと閉まっている扉から風が流れてきた気がしたのだ。
「母さん?父さん?起きてる?」
ノックすると、部屋の中から声がした。
「雅美‥‥逃げなさい」
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