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『それでも僕は君が弾くピアノが好きだよ。指が震えて上手く弾けなくても例えドの音色だけでも僕は君のピアノが好きさ。』
にこりと笑った。
無表情を崩して海は笑った。
いつもの無機質な笑みではなく、愛しいものに無意識に漏れた笑みのような美しさを放っていた。
それを見たクラスメイトもニヒルに笑っていた数学教諭もその笑みに見惚れる。
気づいた頃にはいつものような無機質な笑みに海は変わっていた。
「…海様は僕の事が好きなのですか?」
凛と輝く瞳。
『好きだよ。』
愛しい程ね。と続ける海。
即答に驚いたものの彼はより一層鋭い眼光を向ける。
「彼方様がいながら僕が好きだったんですか?とんだ淫乱で強欲な性格ですね。」
『強欲なのは認めるよ。けれど、淫乱は聞き捨てならないね。僕は君の事が可愛い後輩として好きだったんだけれど……まぁ、思うように思えば良いさ。』
投げ遣りに…面倒そうに言った。
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