1/1
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ

 

   赤々と燃える炎。  苦しみ呻く少年。  そして――漆黒の髪をなびかせた少女。  私に背を向け、彼女は見下ろしていた。人々の憩いの場の筈の公園で、自らが傷付けた少年を。  それは、信じ難い、まるで魔法のような出来事だった。 「何を……したの……?」  ようやく絞り出した私の問に、彼女が静かに振り返り答えた。  そして事も無げに告げた。 「なぁに、ちょっとした“手品”ですよ」  紅に彩られ、藤色の瞳に炎を映して微笑む彼女の横顔は、恐ろしい迄に美しかった。 
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!