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赤々と燃える炎。
苦しみ呻く少年。
そして――漆黒の髪をなびかせた少女。
私に背を向け、彼女は見下ろしていた。人々の憩いの場の筈の公園で、自らが傷付けた少年を。
それは、信じ難い、まるで魔法のような出来事だった。
「何を……したの……?」
ようやく絞り出した私の問に、彼女が静かに振り返り答えた。
そして事も無げに告げた。
「なぁに、ちょっとした“手品”ですよ」
紅に彩られ、藤色の瞳に炎を映して微笑む彼女の横顔は、恐ろしい迄に美しかった。
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