花と鳥と

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 こうして見ると、同い歳で同じ『あすか』なのに、こうも違うものかと、しみじみ思ってしまう。  私と違いスラリとしてスタイルの良い飛鳥さんは、日咲国の制服もとても似合っている。まるで飛鳥さんの為に誂えたような……いや、実際にテイラーさんが採寸をして誂えたのだけれど、それは私も同じ。  やはりこれは、着る側の素材の問題で、例え二人が同じ量販品を着ていたとしても、『どちらが鷹行(たかつら)のお嬢様か』と訊けば、十人が十人『飛鳥さん』と答えるに違いない。  つまりは、そう言う事なのだ。  いつまでも考えていては虚しくなりそうなので、『私は私』と、気持ちを切り替える事にした。 「それじゃあ、行こうか」と笑顔で告げて歩き出すと、慌てた様子の飛鳥さんに呼び止められた。 「あ、お待ち下さい」 「どうしたの? 忘れ物?」 「はい」  どうやら、いつも完璧なイメージの飛鳥さんも、意外とおっちょこちょいらしい。  だが飛鳥さんは何かを取りに行く訳では無く、大切そうに持っていた布を私に差し出してきた。 「ん? ハンカチなら持ったよ?」 「いえ、これは……」  再び飛鳥さんの眉尻がハの字に下がり、「スカーフ、です……」と、言い辛そうに呟いた。 「スカーフ…………あ」  言われて気が付いた。私の胸元に有る筈の物が無い事に。 ――ごめんなさいっ。おっちょこちょいは私ですっ!  心の中で平謝りしつつ、スカーフを受けとった。 「あれ……? でもこれ、なんで飛鳥さんのと色が違うの?」  手にした布は、金色に近い赤みを帯びた黄色。そして、飛鳥さんの巻いているスカーフは黒なのだ。  それに良く見ると、飛鳥さんの襟に入ったラインも、スカーフと同じく黒かった。  学年毎に色分けされている事は良く有る事だが、私と飛鳥さんは同学年。それなのに何故……? 「それは、そのお色が、日咲国学園においては、鷹行家の嫡子である証だかです。  あ、そのスカーフを陽光に当ててみて下さい」 「太陽の光に?」  言われたとおり、玄関から差し込む光にかざしてみる。すると、茶色に赤みが増して、厳かな煌めきを放ち出した。  そして、スカーフを透過した光が、制服の白地に日の丸のような紅色を投影していた。 「なにこれ、すごい……」  手にする事すら畏れ多い、と感じる程の凄みを放つスカーフに、思わず感嘆が漏れた。
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