0-1 孤立、異変、邂逅

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2016年7月4日、インド洋の夜明けは洋上を1年半も生活の場としてきた彼らにも特別なものとなった 「通信機の故障は直ったのかね?」 仮眠をとって艦橋に戻ってきたショーン・パイ中将は艦橋に詰めていた通信参謀に声をかけた 「先ほどご報告に上げた通り通信設備は異常有りません。」 一睡もしていない通信参謀は喋るのも辛いといった顔をしていた 「では何が問題なのかね?」 「この状況はまるで強力な電波妨害を受けているようです。無線、レーダー、GPS、電波関係の装備品は軒並み使用不能です。本官には理解し難い状況です。」 おそらく書き上げた報告書を自分の上司が目を通していないことに落胆しつつも現状を説明していく。  通信参謀の説明を聞く限り彼らは自身の艦隊の座標さえ詳しく把握出来ていないようだ。 「それでは困る、このままでは艦載機の収容が出来ないではないか。全力を尽くしたまえ。」  パイ中将は不快感をあらわにする。通信技術のプロに諦められてはたまらない。 「わかりました、全力を尽くします。」 (設備に異常は無いって聞こえなかったのか?問題は機械じゃないんだよ…)  通信参謀は半ばやけくそ気味にもう一度設備の動作確認を行うことにした。 彼らインド洋に展開する第7艦隊にも『異変』の影響が及んでいた。
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