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「行ってきます、義父さん、義母さん」
微笑んで、少女は目の前の墓標に花輪を掛けた。
名を、ミカノ・ハラルという。
深紅の髪を高く一つに結わえ、ゴムにかからなかった髪は両頬を撫でるように滑り落ちている。
深い緑色の瞳は自身を育ててくれた養父母の墓を見つめていたが、やがて「よしっ!!」と大きく頷いた。
「キーナちゃん、ケイヤ、タヤク、終わったよ!」
「そうか」
彼女が振り返った先には三人の少年少女が立っていた。
ミカノに応えたのはそのうちの、柔らかな茶色の髪をした少年だった。
精悍な顔つきをしており、「よくお前が花輪なんて作れたな」とからかってくる口調は、言葉とは裏腹に優しげなものがこもっていた。
故にミカノも対して気にもせず、「適当に編んだのっ!」とだけ返した。
「ケイヤも、突っ立ってるだけならタヤクの口を殴って止めろ、ってーの!」
「殴ることが前提なのか」
呆れたように答えたのは黒髪の青年である。ケイヤと呼ばれた彼は面倒くさそうに溜息を吐く。
眼鏡の奥の瞳は呆れを滲ませてミカノを見返していたが、ふと、自分の隣にたたずむ少女の様子が気になり、
「キーナ」
と、よく通る声で名を呼んだ。ケイヤと同じく、黒髪で眼鏡をかけた少女はキーナという名前だった。
肩の高さで切りそろえた髪は絹糸のように美しい。
キーナのことを見つめる彼に気が付き、つられるようにミカノとタヤクも彼女に視線を向ける。
そうして場が静まってから、少女の口は開かれた。
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