イヌの気持ち

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ご主人様は泣きたいとき、外で泣く。 僕を必ず連れていく。 そしてある日唐突に 「お前の名前、イヌにしよ」 と言った。 サラっと、トイレ行こ、というようにつけられた名前。 適当だし、愛がないと思った。 でも、よかった。 ご主人様が僕を可愛がってくれていることに偽りはないから。 おじいちゃんとおばあちゃんとのことで限界を感じたご主人様は、お父さんの家で暮らしたいと言った。 お父さんは一人別で暮らしていて、月に一度顔を見に来るくらいだった。 正直僕は嫌だった。 だって、お父さんはいつも僕をいじめるから。 投げたり捩ったり。 そのたびご主人様が止めてくれるけどね。 でも、ご主人様の心が本当に壊れてしまいそうだったから、僕はそれでいいと思った。 お父さんは鳶職で、父子家庭だったからご主人様とご主人様のお姉ちゃんは家事をしなければいけなかった。
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