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「なんてね、嘘だよ嘘。ちょっとからかってみただけ」
先に口を開いたのは少女ではなく少年だった。
「何それ?」
ようやく顔を上げて少年を見つめるその顔は、非常に怪訝で不機嫌そうだ。見つめる、というよりも睨むの方が近いかもしれない。
「ごめんごめん、ほんとはこれ、タネも仕掛けもあるんだよ。極端に1が出やすいようになってるわけ。ま、絶対じゃないからさっきは偶然違う数字が出たけどね」
少年が手の中でダイスを転がしながら言う。その顔に浮かぶ笑みは、少女を怒らせてしまったことに対しての申し訳なさからくるものか、それとも先程まで言っていた言葉についての照れからくるものか。
どちらにせよ、その笑みも謝罪も、少女の許しを得るには至らなかったようだ。少女は机に頬杖をつき、明らかに不機嫌そうだ。
さすがに冗談としてはたちが悪い。気持ちを弄んだようなものなのだから。少女のこの怒りを取り除くのは、非常に大変そうであり、少年は思考にふけるのであった。
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