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学生というのは、楽しみを求めるものである。そしてその楽しみは種類が限られており、最も簡単な楽しみとは、遊びか恋愛かだろう。わかりやすく言えば、異性と遊ぶか、同性と遊ぶか、だ。もちろん、恋愛に関係なく異性と遊ぶこともあるだろうが。
所謂、多感な年頃、である彼らは、後から考えれば笑ってしまうようなきっかけですら恋に落ちることがある。そしてその各所で発生した恋は、心に溜まった想いは、同性が集まればふとしたときに吐き出される。
少女は自分が思っている以上に人気だ、と知ったのもそんなときだった。それと同時に、自分が羨まれ、恨まれていると知ったのも。
少女のことを好きだ、気になっている、なんて言う輩がいれば、どうしても、少女とこいつが付き合うことになったら、という想像に堪えない事態を想像してしまう。それが一人、二人と増えるたび、心がタールのようなドロリとしたものに沈んでいくようだった。
そしてその身動きの取れなくなったところを狙い澄ますかのように、今まで避けて通ってきた選択肢はその引力を強めた。目を逸らしても居座り続け、背を向けても引きつけ続ける。
そうして現れた変化に、少年は悩んだ。だがこういった種の悩みというのは、大抵最初に答えが出てしまっているものだ。本人の気付かないうちに、だが。この少年の場合、どちらの答えが出るかは火を見るよりも明らかだ。
こうして少年は、脆く、危険な道を踏み出すことにしたのである。
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